6人の男性作家による6編の恋愛短編集。
伊坂作を目当てで借りたのだけれど、こういったオムニバスではこれまで読んだことのない作家に出会えるいい機会とも考えている。
そういう意味で最も印象深かったのが中田永一の「百瀬、こっち向いて。」。自称レベル2の高校生の初恋の話。
伊坂幸太郎の「透明ポーラーベア」は姉の元彼という微妙な関係だが、偶然の積み重ねでもたらされる奇跡によって、人と人の繋がりというものを考えさせられるといったもの。奇跡的な偶然といういかにも伊坂的なトリック。
石田衣良の「魔法のボタン」は幼馴染で飲み友達となった男女の恋愛を綴っている。まあ落ちはベタ。
市川拓司の「卒業写真」は中学時代同級生と偶然再会した時の勘違いから起こる話で、これはまどろっこしすぎて読みにくかった。
中村航の「突きぬけろ」は恋愛小説というよりは男の友情を描いたもののように感じられた。学生時代だれかの家で鍋をつついたり、馬鹿なことやってた人なら共感できる部分はあると思う。
本多孝好の「Sidewalk Talk」は離婚を控えた夫婦のやり取り。食事を終え別れればもう愛ことのない二人。しかしその会話はどこか温かいもののように感じさせる。この本の最後にふさわしいように感じた。